彼岸菱

物を考えられるというのは良いことだ。
この一年、ほとんど頭は空白だったように思う。空白を釣りで埋め、虚ろな心で彷徨っていた。
反射神経で過ごす日々。
あの日以来、私の時間は止まっていた。
それを解決できるのはその人しかいなかった。だからこそ待ちわびた。
けれど。


しかしわずかな人々が私を癒した。空白の11ヶ月の後のいくつかの出会い。それらが少数勢力ながらも少し冷えた心をとかした。そして少しずつ血が通っていった。そこには己が少しあった。
事態は進み、物が考えられるようになった。多分、この一週間は去年一年分より頭を使ったかもしれない。食べながら考え、書きながら考え、走りながら考えた。
そしてようやく最終解答が見えてきたように思える。
それはやっぱり見たくないものだった。
でもそれが真実ならばしょうがない。
とりあえず、封鎖されてるのを解除しよう。あの日凍った心。
時はまた流れ出す。