朝起きたら呆とした趣。春が優しく体に染み込んでいる。自分の中に何もない感じ。何かあるのだろうか、と探してみるも気配なし。喜びも辛さもない。半月の海のように波もなく凪いでいる。
ふと、近しい思い出に浸ってみる。
それを思うと暖かくて幸せな気持ちになるけど、その結末を思うと哀しくなる。知っていた結末。強く自分を引きつけていた思いを消すと、そこにはもはや何もなく、糸の切れた凧のように漂うばかり。以前にも一度こんな風になった事があったな。生への執着もほとんどなく、いたって気楽な思いに、春の陽だまりでずっと丸まっていようかと思う。
多分また怯えはある。なるほど怯えとは心が去ると書く。だいぶ前に心が死んだ体。すっかり剥離しやすくなった。
新しく築き上げる事がとてつもない大事業のように思える。でも理論どおりに行くなら、怖くてもやる、だろうな。
うっすら消えそうな自分のカケラ、記憶を頼りに。
船が軽ければわずかな力でも進む。