静かなる顎

aを抱いていると波のような静かな痛みが押し寄せ、徐々に引いて行くと小さな安心を覚えた。識別している。私という記号が彼女からゆっくり帰ってくる。aも心の中に空洞を持ってるので、その中に私の思念が反響する。人はaの空洞の中にいろんなものを無理矢理詰め込んだり捨てたりし、aは少しずつ削られて行く。
aのわき腹のラインをなぞっていると、ろっ骨に行き当たった。重なっている部分に体温が行き交う。東京タワーのてっぺんにつま先立ちするように、或いはあぎとのとんがった歯の先と先が触れ合うように、チンという奇跡的な音を立てて再び存在しはじめる。aのスローさだけが僕を救う。


yは惜しかったけど、思っていた結末。でも基本的なところはしっかりしているので躓いたとはいえ、春の野のレンゲ畑で転ぶよう。むしろ心地よい。おかしな話だが治療されていく。その硬い信頼の部分に。あと2人くらいこういうのがあるといい感じだ。