タワー

タワーの頂上からは海が見えた。
久しぶりの空だった。
タワーの途中までは水に浸かっている。悲しみの海。
新鮮な空気を吸い、両鼻が通る。
羽がぴんと伸びる。
しかしタワーのてっぺんに君はいない。
懊悩の海の中には君の幻がいる。
そう幻でさえ。
でもタワーは立った。
海の上に見えるのはそれだけ。
タワーは立った。