撤退戦

「殿、どうやらまた撤退戦のようでごさるな」
「うむ、どうしたものか我が軍は撤退ばかり。逃げ足だけは早くなったが(笑)」
「見なされ殿、山の斜面の緑が美しゅうござる」
「まことにな。戦の途中は気づかなんだが」
「ある意味心が弾みますな」
「また軍を立て直して…か。終わらなければ始まらないからな」
「やはりあの都に未練が…?」
「理想郷かと思ったがの。なかなか受け入れられぬものよ」
「おや、あの雉も雅な」
「どれ。ほんに良い羽ばたきじゃのう」
「誠に、殿」
「そちも好きなところに行って良いのだぞ?」
「ここで離れては勝った時の立身出世にあぶれてしまいますからな」
「ふふ、ばか者よな」
「我が軍のさもしきはいつものことでございますからな」
「帰ろうか、枯れた土地へ」
「なあに住み慣れてはおりますゆえ」
「遠い都の話でも彩りにな」
「夢のような戦でありましたな…」