彼女の家の玄関前での攻防

さて、連休でありデートである。六本木のおいしいイタリアンの店に行き、窓際から静かな雨に煙る、ライトアップされた東京タワーを眺めつつワイン。二人の間にはキャンドルが置かれ、店員の笑顔のサービスもいいしワインもうまい。店には静かな音楽が流れ、時々響く私の鼻をかむ音以外はいい雰囲気である。
レモンシャーベットとミルフィーユのデザート、そして濃いイタリアンコーヒーを飲んで満足し、店を移動。店に入る前は肩を寄せ合うだけだったが、店を出る頃には雨の中を腕を組んで、相合傘で移動していた。
次はちょっとシャレたバーへ。私の場合、そういういろいろな準備は完璧である。万が一に備えて20有余年(いくつやねん(笑))、あらゆる都市でのデートに対応できたりする。
深い話をしつつ、酒は進む。バーボンがブランデーになる頃、彼女は本格的に酔い始め、だんだん私の身体に触れるようになってきた。そしてもう3杯のボンベイなんとやらという酒を飲むと、ついに彼女は私に抱きついてきた。成り行き上キスをせざるを得ないが、なんせ店の中なのでハードプレイはできない。しかし、彼女には火がついてしまったようで、ディープなネッキングを仕掛けてくる。うーむ。こうなったらそういう場所へ移動するしかないか・・・。
再び雨の街へ。終電はとうになくなっている。ウルフキャノン充填率は220%。
ここで大きな問題が生じた。先ほど、「あらゆる都市での準備は万端」と書いたが、私が六本木で知っているホテルは一つしかない。それはアルファー・インだ(笑) 最初のHがアルファーインというのは非常にマズイだろう。沈思3秒、私の得意な「送り狼作戦」に出ることにした。
「送っていくよ」
とタクシーを止め、乗り込む。彼女の家はまあまあ近いし、ちょっと飲みなおしてねんごろになれば良いかと。
しかし!ここで第一の不運が!さすが私である。そうそう、ハッピーになるのを運命が許してくれるわけがない(笑)
猛烈な尿意!飲みすぎたツケが一気に来た。ペッティングも上の空。とにかくトイレに行きたい。ギブミーシビン!我慢できなくなってついに運転手さんに直訴する。「あそこの公園にありますよー」と停める運転手さん。
しかし、そこは遠かった。急がなくては!なんせ、Hへと流れる状況の中で一瞬たりとも彼女を冷静にさせてはならないのである。酔っ払いつつも走った。しかし、飲みすぎたために馬のションベン状態(爆) ようやく用を足し終えるとすぐ戻らなければならない。走れエロス!遥かなるHのために!
そんなわけで車内に戻ると、彼女のテンションがやはり下がっているような感じ。そして恐ろしいことに気づく。しまった、トイレで手を洗うのを忘れたっ!
彼女はA型であるし、そういうとこは凄く気にするはずである。なんとなく手に触るのがイヤな気配。或いは酔っ払って気づいてないかもしれないが、こっちの戦意がやや低下する。そういう手でデリケートなところを触れないじゃないか。
しかし、タクシーはようやく彼女の家へ。「玄関前まで送るのが男の使命ですから」とトコトコとついていく。そして当然の如く、彼女の家に訪問・・・となるはずであったのだが。
ユコちゃん「今日はありがと。楽しかった」
高橋「んだねー。」
ユコちゃん「じゃ、ここで
高橋「え!?えええっ!?」
ってか、こんなとこでもうタクシーないんですけど(;´`) しかし彼女は電子ロックの中へと消えていこうとしている。思わずドアに足を挟んでしまった。いやらしい刑事みたいである(笑)
高橋「なんかボク、コーヒーが飲みたいなー」
ユコちゃん「だってもう寝るもん・・。」
マンションでじたばた抵抗する私。しかし、ついに結末は訪れた。
「何かトラブルですか?」
なんとマンションの警備員がやってきたのだ!
高橋「いや、このドアのしまりが悪くて・・・」
ユコちゃん「そ、そうなんです。もう大丈夫みたいなんで・・」
高橋「じゃ、おやすみ〜」
ユコちゃん「うん、またね」
そして彼女は電子の要塞の向こうへ。ウルフ・キャノンの充填率は0%に。アオーン・・(;´`)
しかし、肩を落として、車道でタクシーを待ってたら再び、ユコちゃんが出てきた。
「タクシーが通るまで一緒に待ってる」
とのこと。よし、まだチャンスが!
しかし、こんな辺鄙な道なのにタクシーはわずか3秒でやってきた。そんなバカな・・。
高橋「あ、あれって迎車じゃないかなっ(^^;)」
ユコちゃん「ううん、間違いなく空車ね(^◇^)」
高橋「・・(-_-)」
そして1人淋しくタクシーに乗って新宿へ。あとは漫画喫茶が満員で門前払いされたりしてお決まりのパターン。しかしなぁ、キスだけで終わりなんてキャバクラのお姉ちゃんじゃあるまいし。
なんでだろ〜、なんでだろ〜・・・。
また一つ大きく、涙まじりの鼻をかんで始発を待つ私であった。

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