空を見つつ

「刺してくるくらいの女がいいね。そこまで愛情があるのか、と思うよ」
「女は刺すのなんて簡単よ。でもね、そういうのって女を不幸にするよ。そこまでされないとわからないなんて・・」
「そう。そうだね。確かにね」
「・・・なんでそんなに自信が無いの?」
「確固とした感触、というのがないのかもしれない。信じられないのかもしれない。」
「そして試してみる・・。重症ね。」
「そう、気づいた時にはもう、ってね」
「愛されたことは自信にならないの?」
「多分。自分が認めないと。」
「裏切られたことは残るのね」
「それにはよく共感できるから」
窓には降りだした雨の滴がゆっくりと左右に揺れながら降りて来た。
そう、そんな時はよく空を見た。そして今、窓の外の空は藍色と灰色がジグザグに混ざっている。空を見ることくらいしかできなかった。
一人だと思った。二人でいても一人だった。そしてまた今も一人になろうとしていた。引き止める力は何も無い。その後、少しばかりの血が流れる。
誰も留まらない。そんな風に考えると少し哀しくなった。
ただ、そういう哀しさはやり過ごすことができる。気づかないようにして、時間がたてば。確固とした日常のものに目を向ければ。
留まられるよりも、留まるようにしよう。
そう考えて、哀しみを振り切ってみた。

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