いとこの死

いとこが死んだ。男。26歳。心筋梗塞らしい。
電話が入って知らされた。知らされた時は既に葬式も終わっていて、とっくに焼かれていた。いろいろな事情があってそういうことになったのだが。
彼は幼い時から病弱だった。肥満児でアレルギー、アトピー、喘息、便秘と何かと苦しそうだった。でも口が達者で、生意気。しかし優しいところもあった。吉本ばななの「つぐみ」にちょっと似ている。
親にいつも怒られていて、兄貴達にも何かといじめられていたような気がする。なんか貧乏くじをひいた感じだった。
そう、彼についてはいくつか白状することがある。もう死んだからいいよな。
昔、ブルース・リーやジャッキーチェンが流行してた時、私は「鎌ヌンチャク」と言って農業用の鎌を振り回してたら、それがスッポ抜けて、彼の首に刺さったことがある。首から血が吹いて「殺しちゃった!」と私は凄く焦った。でも血は止まって彼は親達に何も言わずにいてくれたけど。幼くして殺人犯になるところだった。すまんかった。
また、ザリガニ捕りにいった時、ちょっと危ない穴場を教えていたら、彼は足を滑らせて池に落ちた。彼の兄貴はおぼれる彼を見てなぜか笑っていたが、私は必死になって助けた。既に100kgを超えていた彼は非常に重かったが、この時もズブ濡れの彼は黙っていてくれた。
そして後年、中学生の時だったか。彼がいつものように寝込んでいたので見舞いに行った。私はこれまでの借りを返そうと、お土産を用意した。
それは当時、幻の超絶裏本だった「金閣寺」。完全にモロな画像が芸術的におさめられたそれを私は友人から借り受け、彼に見せてやった。彼は目を血走らせて、もの凄く喜んでいた。デブで病気がちで、もてなかった彼。多分、素人童貞で死んだのではなかろうかと思うけど、いいことはあったのだろうか。
でも金閣寺はあの当時、なかなか手に入らなかったんだから、ちょっと良かったよな。
あれからずいぶんとたつ。いつも病気で苦しんでいた彼だが、最後は自宅で眠ったまま、次の日起きてこなかったという。苦しまずに逝けたのだろうか。
彼の生はなんだったんだろう。彼的にはいいこといっぱいあったんだろうか?
なんか「もう終わりなの?」って感じの死だった。もしかしたらそうやって死んでいく人はわりと多いのかもしれない。


意味ないじゃん。
意味ないじゃん。


そんな感じ。もう死んで、いなくなった。
今度帰省したら墓参りに行こう。後からでも、少しでも意味がつくように。

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