ハリケーンエアロビクス

朝から仕事をしてて気がついたら台風が来ていた。このところ仕事の後にジムに行くのを楽しみにしているので、窓の外の大雨に憮然としたものの、既にスポーツバッグの準備は出来ている。どうせ汗まみれになるんだし、と意を決して風雨の中を出発。
そしてなんとか到着。予想通り濡れ鼠になりながらも、ジムに入ってしまえば快適な空調だし、さっさと脱いで着替えるとさっぱり。台風にも関わらずわりと人がいた。
ウエイトトレーニングをしつつ窓の外を見ると、台風が完全に上陸して荒れ狂っていたが、安全地帯から眺める台風はどこか別世界のようで、非現実感を感じつもくもくとトレーニングする。
とりあえず3セット終わったので休憩していると、横のスタジオで「今からエアロビやりますよ〜」との声。筋肉をほぐすのにちょうどいいかなと軽い気持ちでスタジオに入っていった。50分のコースである。
で、参加してるのはやっぱりほとんど女性であり、男は数人。最初にインストラクター♀が「初めてやる方いらっしゃいますか〜?」と聞いたので手を上げたら私1人。
「これまでエアロビはやったことありますか?」
「ないです」
「…。キツいですよ。大丈夫ですか?(ニヤリ)」
どうやらそのコースは中級者向けのコースだったようで、そこにいる面々は慣れている人たちのようだった。
(ふっふっふ、かつては運動会のエースと呼ばれたこの私に向かって大丈夫かとは愚問な。婦女子達に負けるとでもお思いか?)
んで、ミュージックスタート。「シャッセ!」だの「マンボ!」だの「ボックス!」だの専門用語が飛び交う。でもまあ、前の人を真似していればいいかと、必死についていく。用心して一番後ろの列にいてよかったと胸を撫で下ろす。
しかし、動きがだんだん激しくなってきた。足がついていかなくなる。この時初めて、私はウエイトトレーニングで体力を使い切ったことを後悔した。筋肉をほぐすどころか、さらに酷使しているような!?
しかも一番後ろの列だといってもスタジオの前面は鏡張りであり、踊っている姿がくっきりと映る。その中に一人浮いてるヤツがいる。誰なんだ、あのドタバタ踊っている田舎者は! 私と同じ服を着てるぞ…_| ̄|○
さらに全体でターンするという試練がやってくる。そうすると一番後ろにいたはずの私が一番前に。見本がない!しょうがないので横目で隣の女の子の動きを見て真似る。みんな自分のことで精一杯だから私のことは見てないだろうと希望的観測をする。しかし。
「初心者さ〜ん、大丈夫? イケてる?」
響き渡るインストラクターの声。イケてないってば! スタジオじゅうの視線を集めタコ踊りを披露。こ、これは羞恥プレイですかっ!?(;´Д`)
精神的にも肉体的にも疲れきったところで、休憩。時計を見るとまだ半分しか終わってない…。
そして後半はさらにエアロビの勢いが増した。常連さんは「ホワッホワッ!」なんて声を出してノリノリ。こっちは吐きそうである。リズムも回転も激しく、その様はまるでジムに台風が上陸したかのよう。その暴風雨にまかれ翻弄される私。頼むから早く終わってくれ! この時初めて、K-1で負けつづける曙の気持ちを理解した。べっちゃと倒れそうである。
しかし、ついに音楽が終わる時が来た。深呼吸がこれほど気持ちいいものだったとは。
フロアでのびている私を尻目に、軽やかに常連さん達が去って行く。私は最後に立ち上がってスタジオの出口に向かった。
出口ではインストラクターさんが、からかうような笑顔で待っていた。
「初めてで大変だったでしょう?」
「いや、なんか、俺って才能あるかな、なんて」
「えーっ? また来て下さいね」
「もちろん!」
余裕の足取りで退場する。震える足でロッカールームに行き、サウナに入った。
燃えた、燃え尽きた…。
そして曙のようにべっちゃと大の字に倒れた。
エアロビクス、恐るべし!

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