悪貨が良貨を駆逐する瞬間

私は心の奥底にわりと単純な信頼システムを持っていて、誰のことも信じやすいのだけど、たまに悪貨に駆逐されて傷ついてしまうことがある。信頼を壊すのはだいたい人間不信の人とか、作法を心得ない子供のような人であり、仕事とかで否応なく付き合わないといけないとなると、これはなかなか辛いものがある。こちらがきちんとある正式な法則に乗っ取って振舞っていても、相手がタコな場合はこちらが損なわれる。もちろんそこは気の持ちようであり、相手が悪いのだから、自分が傷つくことはないのだけど、人は年がら年中完璧にそういう風に冷静に判断できるわけもなく、弱っている時もあるわけで、そういう時に困ったちゃんな人と付き合わないといけないとなると、これは辛い。要求だけする子供のような人とか。何も制約のない付き合いなら2秒で離れていけるんだけど義理がからむとなかなかつらいものである。
本当はそういうのは少しずつ回復していきたいところだけど、忙しいとそれも出来ない。かくしてダメージがたまり、心が少しずつ固まって行く。兆候としてはメールの返事が書けなくなってくるとか、気力がフルゲージまでたまらないとかいろいろあるけど、ここまで来ると自分自身が人間不信になったりしてヤバイ。ウツとか人間不信とかは伝染するのである。
そういうのに対処するのは、恋人とか家族に支えてもらうのが一番である。職業的に、そういう人々と対する機会の多い精神科医は診療机の上によく家族写真を置いているし、ユングなんかも向こうの世界にまきこまれそうになった時、必死で家族のことを思って脱出できたそうな。
しかし、私の場合、恒常的に愛される人間でもなく、結果支えてくれる人も皆無なので自分一人で処理しないとならない。だから難民問題と同じで、そういう壊れた人とは「できるだけ関わらない」のが一番だけど、不幸なことに私はそういう人々に実に好かれやすく、彼らは荒々しい泥のついた手で抱きしめてくる。まあ私は疎外されるものの気持ちはよくわかるし、別に差別もしないのであんまり気にしないのだが、そういう「拒絶しないタイプ」というのは彼らが思いのたけを思う存分ぶつけることの出来る相手であり、船にしがみついてくる船幽霊みたいにひたすらしがみついてきて沈めようとする。そしてこっちがちょっとでも冷たくしようものなら烈火の如く怒る。忙しいからメールの返事を待って欲しいと言っただけで非人間扱いされたりして。下手したら捨てゼリフを吐いて、いろんなところで悪口を触れてまわる。それでもまあたいていは気にしないんだけど(笑)、やはり少しずつは削られて行く。
だからシステム的にはあんまり良くないのかもしれない。普通の人のふりしてれば、彼らが寄ってこないのはわかってるんだけど、わざわざオンガードにするのはめんどくさいので、やっぱりオフガードになってしまう。それに彼らが傷ついてる姿を見ると、ついついかわいそうにと思ってしまう、私の極限お人好しパワー(笑) 自分だって傷ついてるのに、なぜかそれは後回しになってしまう。多分、自分のやり方はシステム的にやはりダメなのだろう。どこかにごまかしがあって、本当にちゃんとした人はこんな風にはならないに違いない。きちんと怒ったりできるのだと思う。ソフト的に強いのではなく、ソフトを運用する際の強さがあるんだろうな。それは才能がどうこうではなく、ある種の事柄を「知っているか知っていないか」で決まる強さなんだと思う。私は知らないので苦労してるんだけど、今推測できるのは多分「人は人に対して傷つけていい」という平等さに関する事項だと思う。「他人を大事にしよう」というぼんやりした前提はあまり正しくないのかもしれない。今目の前にいる人はとんでもなくバカである可能性がある、みたいな。くだらない心配なんかしないで、「バカめ」と一言で処理するのが正しいやり方なのかもしれない。私がお人好しなのも自分に対する同情の延長かもしれないし。
でもまあ船幽霊にたくさんしがみつかれて船が転覆しそうになってアップアップしてても、たまにうれしそうな救われたような船幽霊もいる。そういうのを見ると、ホッとして、まあいいかとも思ってしまう。そこらへんは正しさではなくて選択の問題なのかもしれないけど…。でもまあ自分がちょっと誰かに頼ろうとして船べりに手を伸ばすと、こん棒で手の骨折れるくらいにぶん殴られる。世の中、実に不公平だ(笑)
まあちょっと休んで信頼システムが回復したら新しいやり方を考えてみることにしよう。やっぱり全つっぱで信頼して行くのが自分的に気持ちいいし。強くて優しいシステムというのがやはりいいな。

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