ついに巨鯉を釣り上げる

akane172005-10-06

苦節1週間。ついにその時は来た。ここに辿り着くまでには果てしないドラマがあったのだった…(←大げさ(笑))

それは先週末だったか。雨をついて多摩川に出撃。どこか薄暗い想念を練り込んだような多摩川しゅるしゅるとエサを投げ込んで待っていると、竿がガクンと動いた。エサはコーン。竹輪だとオイカワが釣れすぎるし、パンだとかかりが悪い。ともかくも慌てて竿を上げるとがツンとアタリが来た。
その前日くらいには延べ竿4.5mを奪われており、今度はリール竿でリベンジである。今度は逃さん、とゴム紐で竿と自分を縛っており、万が一にも取られる心配はない。川の中ほどで糸の先がググーっと動いた。

(ふっふっふ、あきらめな。オレというハンターに狙われたのがお前の不運さ…)

カリカリと巻き上げるリール。が…!
なんとリールの巻き上げハンドルがポロリと取れたのである。ハンドルはカンカラカンカンと川へ落ち、後には糸巻きだけが残されたリール…。これってどうやって巻くんだ!?
あたふたしてる間に糸がフケて、鯉は元のお魚天国へ。おのれ上州屋めっ!

猛然とチャリを駆って上州屋へ。
「コラー! このリール買ったばかりなのにすぐ壊れたじゃないか!」
すると店員は慣れた様子で
「それはハンドルのねじをちゃんと締めてもらわないと…。メンテナンスの範囲なので…」
そんなアホな。1週間でゆるむネジなどあるか!と怒りを覚えたものの、所詮980円のリール。安かろう悪かろうである。そもそもチャチくて使いもにならないなぁと思っていたのだ。

その心を見透かしたように、店員が悪魔のように囁やいた。
「でもお客さん、あそこで鯉をかけられるなんて凄いですね。それくらい上級者の方ならもっといいリールがあるんですが…」
「…ナニ? 上級者とな?」
「このリールは初心者用ですし、巻いている糸もイマイチです。パワーもちょっと…。少しお待ちください」
店員はそういうと一つのリールを持ってきた。
「このリールはいいですよ。操作性もいいし、糸もいいです」
「少し高いようだが…」
「このリールは使う人を選びますので(ニコリ)」
「ほほう上州屋。お主も悪じゃのう…」

そして店を出た時には新型リールがしっかりと握られていた(爆) まあ、シマノ製だし、鯉をきちんと上げるためにはこれくらいでないと…。

そしてリベンジバトルはやってきた。夕方5時過ぎ、既に夕日はつるべ落とし。暗くなりかけた河原に私以外誰もいない。ちょっと前まで例の異邦人の少女が家族で遊びに来ていて安心していたりしたのだが。
時は来た。竿がテトラポッドの上で踊りだす。

「ホイっ!」

とあわすとズシーン!という衝撃。しかしそれ以上動かない。もしかして根がかりかと心配してたら、その重いものはなんと川を横に動き出した。
これは生き物…。奴だ!
ポンピングして巻いていると抵抗しながらもジワリジワリと寄ってきた。水面に寄せると大きな金色がピカリと踊る。鯉だ! しかしなかなか空気を吸わせる事が出来ない。鯉は暴れて必死にもぐろうとする。竿は満月のようにしなり、川の中にぐぐっと引き込まれそうになった。体重があって良かった!とこの時初めて思った(笑)

竿の下で暴れさせて疲れを待つ。乳酸が鯉の筋肉に蓄積される。川を縦横に横切って抵抗する鯉。リールをぐりぐりと巻くと、あまりの荷重にカシューン!カシューン!と空回りした。ドラグを強めてさらに巻く。吼えよ、高級リール!

やがて鯉が上がって来る時が来た。デケー!
多分、60センチくらいか。やはり重いだけのニゴイとは違ってファイトがある。ここまで大きいと何か神秘的にも思えてくる。針を外して川に放すと、鯉は悠然と水中に消えていった。

顔がニヤついて困った。ついに巨ゴイを釣り上げたぞ、との思いで自然に笑みがこぼれる。川からもぎとった、自然の化身のような巨鯉。それはまごうかたなく勝利であった。誰にも頼ることなくただ1人の工夫と根性で釣り上げた勲章。力がみなぎってくるような気がした。それはまるで何かのイニシエーションのようであり…。

さて、次は海ステージか。クロダイが私を待っているような気がする。

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