15ラウンドKO

その昔…といってもちょっと前かもしれないけど、ボクシングの世界タイトルは15ラウンドで争われていた。今では安全上の理由により、12ラウンドくらいになっていると思う。ロッキーの時代はまだ15ラウンドであった。

15ラウンドも戦うと、パンチもヘロヘロで足もガクガク。もはや1ラウンドの頃に持っていた闘志や希望、野心なども崩れかかっている。意地だけの勝負。そこでは練習で積み上げたものだけがわずかに形骸を残しているだろう。

そして15ラウンドでKO。テンカウントが意識のどこかで響く。嬉しいのか悲しいのかわからない。しかし、もう打ち合わなくていいことだけはなんとなくわかる。
長年付き合って別れるということは、そういうことかもしれない。

★★★

先日、ヘミングウェイ老人と海を読んだ。大人になって読むと、子供の頃とはまた違った良さが現れてくる。子供の頃はマリーンや鮫との戦いに胸躍る。しかし今読むと、老人の哀切がよくわかる。真のプライドは謙虚になることによって失われることはない、と老人は言う。船上で一人でも、どうしようもない絶望に叫んでも彼は死なない。港に帰ってくる。彼のかわりに、彼を慕っている子供が泣く。すげぇな、ヘミングウェイは。本物の文学というのは凄い。多分、誰よりも真剣に生きて、誰よりも真剣に書いたのだろう。「老人はライオンの夢を見ていた」という終わり方もいい。
老人は戦いきった。

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