華麗なるカレー

久しぶりにカレーを作ってみた。ルーは「熟カレー」。とろとろにしたカレーを腹いっぱい食おうという作戦である。
野菜や肉なんかを煮て、ルーを割って投入。とろみが出てきたら火を止めていいと書いてあったのだが、どっかの女の子が「カレーは煮れば煮るほどうまいよ」と言っていたのを思い出し、気長に煮続けた。洗濯をし、風呂に入って、レタスの準備をし、ごはんを皿に盛ってさあいよいよ。初めチョロチョロ中パッパとフタを開けてみると…。
なんだこれは。いや、この物体は。
確かに1時間くらいは煮たと思うけど、何か岩のようなものが転がっているではないか!
とりあえず色はカレーのそれなので、オタマを突き立ててみたが「カーン!」と弾かれた。ジャガイモか? いや違った。カレー全体が妙に硬いのである。それでもグリグリとオタマをねじ込んで掬おうとすると、鍋ごと持ち上がってきた。………。
失敗は認めたくなかった。ごはんはホカホカと炊けているし、オカズは他にない。牛肉、そして面倒なのに剥いたジャガイモ。ニンジンは嫌いだから入ってない。そんな完璧なカレーなのに彼は固まっていた。
「おい。緊張することなんてないんだ。ホラ、心を開いてごらん?」
しかし彼はかたくなに心を閉ざしたままだった。無理やり引き剥がしてゴハンの上に盛ると、塊のまま微動だにせず無残な倒立を続けるのだった。これは何かのオブジェなのか?
岩を食う感覚。しかし、これはカレーなんだと自分を騙し、食べ続けた。
鍋の底は黒く焦げており、物体はまだ半分ほど残っている。
そして私はいまだに敗北を受け入れられないでいる。

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